毎年初めのクラブイベントのミウラ・セブンまわり。集まったのは六人。三崎口の駅で待ち合わせて、大先輩の車で妙音寺に参る。「声をあげるな」という看板がでている厳しめのお寺。階段を上がっていつものお堂に向かおうと思うと、目の前で重機が空き地をならしている。お堂を建て替え中のようで、もっと上に、さらに階段で上がっていってお参りできるようだけど、時間が惜しいので、その階段の上り口に置いてある賽銭箱に投げ入れ、階段に向かって今年の三浦カヤッカーを見守ってもらえるようお願いする。
そしたらクラブハウスに移動して身支度とカヤックの積み込みを終え、出かける前に地元の白髭神社にお参りする。一番お世話になっている神社なので、お賽銭もはずむ。前回来た時に買った手袋は結構売れたと見えて、小豆色の最後の一個があるばかり。それを熱心な後輩が買って喜んでいた。
もう一度車中で菊名海岸でカヤックをおろす。ちっこい後輩が家族で見送りに来てくれた。さらにちっこい子供は支度中のカヤックに勝手に乗り込んでニコニコしていた。大きくなるのが楽しみ。出発の集合写真を一緒に撮って、いざ六艇のカヤックが水に浮かぶと、なんだか子供は泣いてしまった。後輩に抱き上げられて泣いている浜にみんなで手を振りながら、次の円福寺に向けて漕ぐ。少し北風を感じるけれど、冬の東京湾はこんなものか。
風表になる金田の浜は船の出入りに気をつかう。今回は全員クラブメンバーで、誰も沈せず無事に浜にあがり、円福寺にお参りする。帰りがけ、石畳におちた千円札を大先輩が見つけて、落とし主とおぼしきグループに素早く声をかけて、早速徳を積んでいた。
次は剱崎を回って毘沙門の浜にあがり、毘沙門堂にお参りする。白鬚神社についで馴染み深い。横瀬島はいつもの折り返しポイント。浜に戻ってお昼にする。浜には車が何台か止まっていて、そのうちの一人がラジコンのグライダーをふわりふわりと飛ばしていた。
今年は集合の時間が一時間遅い。メンバーのみなのでここまでのペースは良いけれど、お昼にのんびりしてしまうと日没タイムアウトしやすい。年末に洗濯機が壊れたという大先輩の話に、冷蔵庫が壊れたという後輩がさらに乗っかり、花が咲きそうになったのをなんとか堪えて大先輩が出発の声をかける。
ここんところ潮が澄んでいて、東京湾はそれほどでもなかったけど、城ヶ島に向かうにつれてぐんぐん透明度が上がっていく。空は冬の薄い青、風も落ちて絶好の漕ぎ日和の中静かにパドルを回していく。
それで三崎の堤防を回り込み、海外町のあたりで舟をあげた。ここから三崎の街並みを抜けて見桃寺と海南神社をお参りし、ささっとまた海に戻る。これで三時過ぎ。風もないし、完漕の見込みがついた。凪いだ海を滑るように漕ぐ時の心持ちはまた格別。パドルの音もなく船が進んでいく。
だいぶ陽が色づいてきた頃合いに黒崎の鼻につき、左に大根、右にキャベツの畑道を抜けて最後の延寿寺にお参りする。カヤックで来たのがわかったのか、寺の関係者から声をかけられ、以前クラブメンバーだった甲斐性のある先輩の近況を聞かせてもらった。先輩は今年は走って七福神をまわって、三時間半ほどだったそうだ。登り下りのある半島の道をよく走るもんだ。元気そうでなにより。2021年は一緒に年越しサーフできたけど、去年はこれなかった。今年もどこかの波で会うと思う。
そうして黒崎の鼻の浜に戻ると、もう日没がぎりぎり。ちょうど漕いでいる間に完全に沈むだろう。
海上に戻ってお日様をちらちら見ながら、そのうち沈んだら、暗くなる海の底をゆらゆら見ながら入江に滑り込んで舟をあげた。
一年の初めを良い漕ぎでみんなと回れた。今年もたくさん良い海で漕ぎ回れますよーに。