小網代の森カヌークラブ (パドリングウルフ) で毎週末誰かしらと一緒にシーカヤックを漕いでいます

2021年3月26日金曜日

20210326 鯛の牙

今年も世の中の物事がいろいろ重なってうねりを作ってる。また一つ季節が進んでだいぶ暖かくなった。そろそろドライを脱いでもいいかなという陽気だ。

平日にクラブハウスに来てみると、ボート釣りの人が何人か支度をしている。あれー、土曜日みたいですね、お互いニヤニヤしながら声をかけ、準備が済んだ人から海に出ていく。

薄い舟を浮かべて乗り込み、入り江を滑り出す。冬の澄んだ潮からは時期が進み、春のトロンとした色が出てる気がする。

堤防を回って外に出ると、のたりのたりとした海。空も春霞で、富士山はぺったりした空気の向こうに塗りつぶされた。

風は朝から夕方まで一日弱いままの予報。一瞬昼前に南が強まるかもしれないけど、どこまでも漕げそう。よし、北の名島にお参りに行こう。

とことこ漕いで、荒崎まではできるだけ岸寄りに。そこからは長者目指してどーんといく。ついた名島のまわりは海藻がわさわさしてて、浅い岩場を覗き込んで回った。

名島から向こうに江ノ島が見える。ぷかぷか浮かびながら手を合わせて引き返し、長者の砂嘴で一休み。

帰り道は岸沿いで、久留和の浜の色や、佐島のキラキラで目を楽しませながら、荒崎を回って堤防まで帰ってきた。

ひょっとみると、堤防の付け根の砂浜で、遊び上手の先輩がロール練習をしている。近づく間見ていると、熱心に何度もくるくる回ってる。まだ水は冷たい。

静かに後ろから近づいて、沈した瞬間に横につけ、上がった瞬間に挨拶をすると驚いてくれた。しめしめ。

話を聞くと、ゴーグルをしているとヌメーっとゆっくりしたリズムであがるんだけど、ゴーグルなしだと、ついついスパッと上がってしまうんだそう。ゴーグルなしでもヌメーっとやりたくて、体に染み込ませてるのだそう。

確かに、基礎がしっかりとしていないと、ショートのロールでゆっくり上げるのは難しい。パドル面が動いてのサポートが減るから、他の要素がちゃんとしていないと安定して上がらない。

とはいえ、先輩はそのへんの要素はばっちしなので、あとは気持ちの持ちようだけですよね。

体が冷えたので、戻りましょうかと漕ぎながら話を聞くと、キング先輩も漕ぎに来ていて、油壺入っていくのを見たそう。あそこでのんびりするのも良いよね。

仕舞支度は釣りの人、カヤックの人がまじりながら、明日土曜も海況はすごく良さそうなので、また明日きちゃいます?なんてジャブの打ち合いをしながら。

釣りの人でも一番馴染みがあるお兄さんは、真鯛、メジナ、アカハタ、オウモンハタを持ち帰る。そのお兄さんに思い切って、鯛の歯を貰えないか声をかけた。

自分はここ一年、金継ぎをしているのだけど、蒔いた金粉を磨くのに、鯛の歯がとても具合が良いみたい。鯛牙とも言われ、棒の先につけた鯛の歯で、金粉の表面をなでてやるとピカピカになる。ほかにもガラスや瑪瑙も使われてるようだけど、三浦の地元の鯛で作れるなら嬉しい。

このお兄さんは、魚屋で売ってるアラなんか目じゃない大きさのサイズをいつも持って帰っているので、もし捨てるならと事情を話したら、今日釣った鯛から前歯の部分ゴリゴリと切り離して僕にくれた。ありがとう!今年も一年、漁に恵まれますよーに!

家に帰って一番大きい歯を一本、丁寧に切り離して棒の先にくっつけ、手元の試し塗りの銀粉を磨いてみたら、すぐツルツルになった。


桜の咲く頃に釣れた三浦の桜鯛、ありがとー。

さて、また明日も良い海況。陽気に誘われて漕ぎに行こう。

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