小網代の森カヌークラブ (パドリングウルフ) で毎週末誰かしらと一緒にシーカヤックを漕いでいます

2021年4月18日日曜日

木賊をさがして


暇があればカヤックをしていたいと思うけれど、中々そうも行かないこともある。休日の海況が悪いこともあるし、家のこともあるからそうそう毎日漕ぎにでるのも憚れる。そういう時にも、家の中で少しでも海やカヤックに触れてたいと思ってた。

ある時、お昼に上がって休んでいた浜でぶらぶらしていたら、トコブシの貝殻がとてもきれいなのを見つけた。それで、自分の指輪から貝のパーツがいくつか抜け落ちているのを思い出した。

ぐるりと20個ほど三角形に切られた貝が嵌めこまれているうちの、数個がなくなってた。ちょうどいいやと、最初はアワビの子供だと思っていたトコブシの殻を持ち帰り、割って削って形を合わせ、欠けた場所にはめ込んで、満足した。いつでも三浦の海を身に着けていると思えるのは悪くない。一つ、また一つと嵌め込んで、都合半分程はもう三浦のトコブシに置き換わってきた。


その次は、正月の三が日に、割り箸を捨てるのがもったいないような気がして、見様見真似で適当にカヤックのミニチュアを作ってみた。それにちょっと興が乗って、伝統的なグリーンランドカヤックの作り方を調べ、それを真似て  1/10 のサイズでもっとちゃんとしたものを作って見た。

子供の頃には、図工が嫌いでしょうがなくて、作品を完成させたことなどついぞ無かったのに、歳をとって気が長くなったのか、ちょっとずつ作業を進めて完成にたどり着くことができるようになったようだ。


ミニチュアを大先輩に見せたら、削りかけのグリーンランドパドルがそのままになっているのを、大先輩が僕にくれた。その材は作りかけの途中に誤って折っちゃったけど、一本、ちゃんと完成したいと思ってホームセンターで 1200円の米松を買ってきて作ってみた。これは中々思ったような重さと出来栄えが難しく、次の、またさらに次のと作って、今の所片手の程の本数を作ったけど、まだまだ作ると思う。折っちゃった大先輩の材はその後、うまく他の材を組み合わせて一本のパドルに仕上げられた。どこかに引っかかってたトゲが抜けて良かった。

まあまあ良くできたと思えるようなパドルには、雪月花をテーマに、月だったり桜の花だったりを、これまた三浦のトコブシの殻で螺鈿をして勝手に満足している。まだ雪をやれていないので、次こそは雪で作ろうと思う。


そうして、鉋やノミを研いだ砥の粉がでたり、木のクズが溜まってきたりすると、どうやらこれで金継ぎができるようだと気がついた。

漆を買ってきて、自分の気に入ったぐい呑や茶碗の欠けを繕って、だんだんと金継ぎの道具や材料が増えてきた。

漆の表面を研ぐのに、いろんな方法がある。近代的な方法としては耐水ペーパーが思いつくけど、これは器の表面に傷がつく。器に優しいのは、じつは伝統的なやり方の炭や木賊のほう。炭でいくら器をこすっても、釉薬のガラス質の表面は傷がつかず、漆だけを見事に研げる。

もちろん、研ぎ用には最高級の駿河炭というのが売ってはいるのだけど、ここでも三浦の浜が活躍した。浜で砂をザラザラと手で掬えば、炭の屑がいくらでも見つけられる。ちゃんとしたものではないけれど、別に自分の器を直して悦に入っているだけだから誰も困らない。

ところが、炭だとちょっと研ぎが荒いので、木賊のほうが細かく表面を仕上げられるらしいと知った。なので、次は三浦の浜で木賊を探そうと、晴れた大風の日に三浦のあたりをぶらぶらしている。

カヤックが今の所、螺鈿、ミニチュア作り、木工、金継ぎと流れてきている。この風が吹いたら的な繋がりを、なんとかカヤックに戻して循環させたいのだけど、木賊の次がどうなるか先は見えない。見えないながらも漕いでいれば、次の岬を一つずつ越えて、そのうちまたカヤックに戻るかな。

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