知らない漁師の家に上がりこんで、太刀魚より少し肉厚な白身の焼き魚を食べている。ゴンドウという魚だ。背骨を取るとついてくる薄い身の部分を歯でこそぎ取ると、少しの炭の味と塩味しかしない。油の抜けたパサパサの鯵の干物といえば近いか。
目の前に座る若い漁師は、こんな魚が旨いわけがないという。それでも食っていかなくちゃならないし、腹が減ればどんなものでも旨いという。
その次は寒い漁港に立っていた。まだ本格的な冬の前、明るい灰色の景色のなか白い雪がちらほら舞っている。僕は若い漁師の家族とともに漁からの帰りを待っていた。人混みに迎えられた漁師が一人々々家族と落ち合って帰っていく。今日の漁は誰もあまり芳しくないようだ。最後に若い漁師とその家族だけが残った。
若い漁師は家族に苦笑いして、「ゴンドウが四匹とれたばかりだよ」と言った。そうして僕に向き直り、「こうでなきゃ、ゴンドウの本当の旨さはわかんねえよ」と強く言った。
そういう夢を見た。
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