小網代の森カヌークラブ (パドリングウルフ) で毎週末誰かしらと一緒にシーカヤックを漕いでいます

2018年5月27日日曜日

20180527 江ノ島

日曜はクラブのみんなで江ノ島チャレンジ。往復で50km弱漕ぐ。お日様は申し分ないが、午後から南風があがるいつもの様子。中潮の干潮手前から満潮過ぎまで漕いだ。

50km 漕ぐということは、時速5km平均で10時間。日没七時から逆算し、休憩などの余裕も見込んで八時にスタートでもシャクシャクとは言えない。家が遠い人は前泊して朝一の行動。僕は始発から動いてクラブハウスに集合。


シングル5艇、タンデム1艇、総勢七人で八時に湾奥に浮かび、停泊ヨットの北側を抜けて出ていく。海は静か。小網代湾入り口から相模湾を見渡す。霞んで伊豆半島は見えない。江ノ島も亀城礁も見えない。まあ、近づいたら見えるでしょうと、330度の保針で漕ぎ出す。

六艇がコンパクトにまとまり、静かな海を淡々と漕ぐ。亀城礁の北側は漁船が掻き回した後なのか、砂ぞこまで通った光が緑色にぬめぬめする水面を滑らかに漕いだ。亀城礁から進むとうっすら江ノ島が見え始める。長者沖、逗子沖でも小休憩をとりながら漕ぐ。


大先輩から「省エネモードですか?」と一度聞かれ、「はい、先は長いですから体力温存で」と答える。肩から先の力をできるだけ抜き、足の力だけでゆったりと漕ぐよう意識する。のんびり大手を振って歩くように。

鮫島沖ではウミガメの死骸が腹を出して漂流していた。岸までは4キロくらいか。


そうこうして正午江ノ島につく。早い行動をこころがけて30分の昼休憩。折り返してからは岸ベタで。すでに風は南に変わっているが、それほど強くはない。

稲村ヶ崎を過ぎてペースが落ちだしたけど、まとまって向かい風を漕ぐ。省エネモードで、腕の力を抜いて、足だけでゆったりと。稲村ヶ崎までは浅い砂浜に向かう波が、長者までは岸壁から跳ね返る波と混じってグチャグチャした波がごくたまに脇腹に当たる。楽しい。


途中ペースの違いをフォローして待ちながら長者に3時半頃つく。ここまでずっと向かい風、ここからも最後まで向かい風。疲れが物を言う時間。それでもメンバー全員でゴーと決める。

ちょうど満潮、長者の砂洲をそのまま通り抜けられる。ここと稲村ヶ崎を回り込む時が一番風が抜けてた。どちらも抜ければ一瞬で落ちるけど、風を受けて重いカヤックをパドルを刺して止め、一掻々々前に進んで抜けた。


長者からは真っ直ぐに荒崎を目指す。どうせ岸に寄っても隠れる風裏はない。真っ向勝負で漕ぎ進む。グループのペースが一番落ちた時間。小田和湾沖で調子を崩したメンバーもあり、より近くにまとまってチームで荒崎に向かって漕ぐ。夕六時を少し過ぎて着く。浜に舟を上げて相談。

いくつかオプションの中で、上陸している今の状態よりもリスクを増やさない判断を選択、ここで終了としてクラブハウスにいるメンバーに連絡し、車で迎えに来てもらう。その可能性も考えて、NZ好きの先輩が待機してくれていた。舟を車に積んでクラブハウスに戻り、道具を片付けてみんなで打ち上げた。ほかにも江ノ島組を迎えるために待っててくれたメンバーと一緒に。

カヤックの楽しい所は一杯あるけど、なかでもチームとしての判断を繰り返す醍醐味をよく味わえた日だった。そうした判断と行動の結果がピタリとはまり、みんなで笑って一日を終われたら大成功。今回の江ノ島もそういうコクのあるツアーだった。この時期はいつも午後は風が上がる。向かい風の中を20km以上漕いで帰ってくる、そういう経験を最大限の安全の中でやれるクラブでとても良かった。

また来年も江ノ島道場、是非参加したい。

2018年5月19日土曜日

20180519 みんなで水浴び

土曜日、一日12m/s の強風注意報が三浦に出てる。それでも正午あたりに南風から北風にかわるあたりで一瞬風が弱まりそうなので、湾内で遊ぶくらいならやれるかもしれないと出かけることにした。中潮の干潮前後4時間ぐらい漕げた。

朝は南風がまだまだ強いだろうと、昼前を目指してのんびり動く。三崎口駅のホームにおりたら空気の匂い、日差しの肌にあたる感じが真夏だった。でも、次の日の日曜の朝家から出るときには北風の乾いた秋になってた。暖かな空気と冷たい空気が押し合って、その振れ幅が落ち着いてくると梅雨が来るなあ。

ついてみるとちょうど支度をしているメンバーが一人、さらに二人ほどメンバーがすでに出艇していた。僕らが支度をしている間にさらに一人、全部で5人ほどになって、思ったよりも賑やか。


風の様子を見ながら小網代湾内で遊び、強まるようなら湾奥まで戻るという方針でグループ行動することにして、湾内の浜で集合する。浜の前でめいめい水に濡れる練習。

素潜り好きの先輩はスカリングブレースの練習、他にロールの練習をしたり、僕はトーイングしてる時に沈したらどうなるかやってみたり、穏やかな海で遊ぶ。

昼過ぎて風がとても落ち着いているので、ちょっとだけ湾から出てすずめ島まで往復。そこでまた水に濡れる練習をして、交代で T レスキューやったりなんだりで、北風に変わるかなという雰囲気になって湾内に戻った。


湾内にみんなで戻ると、ちょうどヨットの脇から大先輩が一人で出てきて、少し波に乗れないかと堤防を回って出ていった。


最近、メンバーのその日の行動予定をにきちんと記録し、出艇・上陸の状況をお互い把握しようとクラブで工夫をしている。大先輩とガンガン漕いでる同期の旗振りでこういう動きがある。万が一があった時に、陸にいる人たちがすぐに必要な連絡を行えるようにするセーフティネットになる。

大先輩はどうかなと片付けを終えてクラブハウスでのんびりしていたら、上陸の予定時刻ちょうどになって上がってくる姿が見えた。電話してみようと心待ちにしていたので少し残念。

他にも、グループ行動する時に漫然と集まって漕ぐのではなくて、行動のリーダを決めて漕ぐようにして行く様子。リーダを決めることで、どこに向かって漕ぐかの意識の共有、声が届く範囲での行動を促すなど、より安全にカヤックを楽しむためのスキルを高められると思う。

2018年5月15日火曜日

20180515 チェックポイント

今週の週末は漕げそうもない。火曜なら天気も良さそうで、休みを取って三浦にやってきた。大先輩のツアー組が結構大所帯になるので一日くっついて漕ぐことにした。他にもガンガン漕いでる同期が一緒に漕ぐ。風の予報は悪くないのだけど、午後はやはり南風があがりやすそう。大潮の干潮手前から満潮まで漕いだ。

始発から動く。平日は女性専用車両があるから間違って乗らないよう気をつける。ツアー組が来る前に支度をして荒崎方面に漕ぎ出した。


とても潮が低い。網代崎はかすかなうねりが横に広くのんびりと崩れ波をつくる。近場のポイントでゆったりした小さな波に一本乗って先に進む。佃嵐崎ではサーファーが一人波乗りしてた。挨拶に軽く声をかけたけど、感触が良くなかったのでそのまま先に進んだ。


よい時間で折返し、すずめ島まで戻る。砂地と岩場が混ざった間にまばらに海藻が生えて青みがかった砂漠のよう。小さい魚の群れだけじゃなくて、おいしそうな魚も見える。背中がぜんたいに黒い魚や、目の横から体にラインの入った魚などが海藻の隙間をゆっくり抜けて逃げる。そんな様子がよく見えた。

それで湾内に戻ってみんなと合流し、出艇の準備を手伝う。10人を超えると違った苦労も増える。それでもヨットの間を抜けて広いところにでると一息つけた。

午後からの風の上がりを気にして、近場の諸磯で折り返し、すずめ島手前の浜のどこかで昼ごはんの予定。その間に何回かレスキューもあったし、諸磯から戻る追い風追い波では肘が痛んで舟の向きを抑えられなくなった人をやむを得ず引いたりもした。

そうして頑張って、最後の一人が昼ごはんの浜についたときは歓声が上がって、ちょっとした冒険を楽しんでもらった。のんびりし過ぎたお昼のあとは、浜から堤防を回るまでの風がまたちょっとキツかったけど、舟を上げたときには文句も笑い話になってた。


今までのカヤック経験が随分活きたと日だったと思う。まだ少ないけど、あるだけの引き出しを十分に発揮できたと思う。視野も広く持てたし、必要なときに必要な事ができた実感があった。そういう意味では、3年生を終えるにあたってのとても良いチェックポイントになった。

今週の土曜は漕げなそうだから、金曜にカヤックショップでも行って、酔っ払った勢いで何か買ってしまおう。

2018年5月14日月曜日

小網代湾内でのお願い


小網代湾内でカヤック・SUPを漕ぐときに、漁船やヨットの人たちとトラブルにならないように守って欲しい事項があります。
  • 湾内は北側の岸寄りを漕ぐ。生け簀と北岸の間が目安
    (生け簀とシーボニアの間は漁船・ヨットの航路です。航路には入らない)
  • 湾奥の入江への出入りは北側の岸と係留ヨット群との間を漕ぐ
    (ヨットとヨットの間は通らない)
  • 湾を渡るときは、堤防付近を堤防に沿ってまっすぐ最短距離で横断
    (ヨットや漁船の出入りによく気をつけて)
  • 湾奥の入江の干潟には上陸しない
    (特に、野鳥観察の団体がいるときは、鳥を刺激しないよう離れてましょう)
航路の中やごく近くを漕いでいたり、ヨットの間を抜けてくるカヤックを何度かみました。気がつけば声をかけて岸側によってもらったりお願いしてますが、時々は気づくと漁船にプープー警笛を鳴らされるのも聞こえます。

海は開かれたものですので、気軽に小網代に漕ぎに来てほしい反面、トラブルが増えると禁止ということにもなりかねません。上に書いたお願いを聞き入れて貰って静かな小網代湾内を楽しんで欲しいと思います。


また、ネットでこういう情報を仕入れるのも一つの手段ですが、それぞれのエリアにシーカヤック、フィッシングカヤックのツアーをやっているガイドさんたちもいます。一度はそういうツアーに参加して、そのエリアの様子を直接聞くことで無用な失敗を避けることもできると思います。ローカルルールに限らず、荒れやすい条件だったり見どころだったり、情報の宝庫です。何より、同好の人たちとの出会いは良いものです。


基本、このブログは僕の個人的な記録でどれほどの人が見ているかわかりませんが、もし目に触れましたらどうぞこれらのお願いを覚えておいてください。


2018年5月12日土曜日

20180512 水浴び

天気はいいのだけど、午後になるとどうも南の風が強まる時期が続く。中潮の干潮手前から満潮手前まで漕いだ。

始発で動いて、定刻組が出てくる前にちょっと漕いでくる。レジェンド先輩も早々とやってきて、南方面に漕ぎに出た。僕も支度を終えて、北方面に漕いで行く。

先日は夜半まで南西の風がちょっと吹いていて、網代崎は引いた潮に小さな小さなウネリが軽く波を崩してる。波乗りはちょっとできそうにないけれど、定刻組のツアーには良さそうだ。

三戸浜、長浜の沖には釣りのカヤックが4、5艇出てる。釣りの邪魔をしないようにちょっと距離をおいて抜けていく。朝までは風が強くない予報だからと、早起きをして出てきたんだろうな。もともと朝マヅメという言葉があるらしく、釣りの人たちはなんでも早い。

佃嵐崎について、ここで引き返せばちょうど良い時間。陽射しがあるし、馬乗りレスキューの練習をする。水につかると気持ちいい時期になってきた。レスキューの合間に舟に掴まってプカプカのんびりする。

浮いている間、風は南からなのに舟は南に向かって少し流されてた。岸から50mほどのところでやってたけど、漕いでると気づかない流れがある。


そろそろ時間なので、定刻組に合流しようと湾内にはいると、タンデムのカヤックが生け簀より航路側にだいぶ寄って漕いでるのが見える。釣りに出て帰ってくるところみたいだ。ヨットが出て来る時間帯で曳き波もくるし、声をかけて生け簀の岸側、北側を漕いでもらえるよう声をかける。

そうして湾の奥にもどって合流した。今日の定刻組は4人のお客さんにさらにメンバーがいて結構賑やか。午後の風の上がりを気にして遠くまで行かずに諸磯で引き返して近場でお昼ごはんに上がる。お客さんの一人は休憩の間にみんなをあおってあおられて、上半身裸に短パンで泳いでた。まだ水温18℃くらいだから元気だなあ。

釣りのカヤックもたくさん見たけど、ツアーのカヤックも幾つかみた。朝小網代の奥で一組、途中油壺湾内に入ったときもまた一組いて、いよいよ海のシーズン。スノーケリングもしやすくなるし、ぜひどこのツアーでもいいから、カヤックとおいしい地魚を楽しみに三浦の南に来てほしい。



2018年5月3日木曜日

20180503 - 0506 宮津キャンプツアー


終わっての振り返り:

普段のカヤックツアーはスタートからゴールまでのコース線上にキャンプ泊の点を打っていく一次元的な動き。でも今回は、キャンプをひとところに決めて動かず、その点を中心に円を広げる二次元的な動きをした。カヤックを主、キャンプが従を前者とすれば、後者はその逆、キャンプを主、カヤックが従とも言える。家からママチャリで買い出しにいく感覚でカヤックを使い、とても新鮮で楽しかった。こういうツアーの方が性にあってるかもしれない。


出発前:

GW後半、クラブの総勢六人でキャンプツアーに行く。当初は島根半島を漕ぐ予定だったのだけど、風の予報を見て断念。臨機応変。南西の強風が日本全国で期間中吹く。どこを漕げば良いのやら。

紀伊や四国あたりで川を下ることになるか。5月3日は風だけじゃなく雨もある予報だから、増水したりやしないかなと予想しながらワクワクして大先輩の発表を待つ。予め自分でも考えておいて、それを大先輩の判断と答え合わせする。

結果は京丹後宮津。日本三景の一つ天の橋立のあるところ。天の橋立から東に進み、高浜までを三泊四日で回る予定が発表された。なるほどー。他に候補に残ったのは、四万十、瀬戸内しまなみ海道だそうだ。あとは実際に現地で海を見て。

とあるJR駅で大先輩の車にみんなで集合したのは5月2日夜の10時。これから夜通し宮津に向って走る。


5月3日:

ガンガン漕いでる同期はクラブのムードメーカ。今回はその同期が参加してないので、車中は控えめのトーンで寝た人も何人か。何回か休憩しながら高速を走り、舞鶴で下道におりて天の橋立の出艇予定地につく。海を見てアウト。

橋立の西側は囲われた水域で吹送距離が 2km ほどしかないけど、南西からの風が吹き抜けになってしっかりとした風浪が橋立に打ち付けている。逆に東側は松林に遮られた風裏で、橋立の近くの白い砂底の海は明るく穏やか。だけど対岸の黒崎半島近の岸には厳しい風浪があたってるだろう。

初日のキャンプ予定地は黒崎半島の東側で、天の橋立から宮津湾を東に渡って黒崎半島にとりつき、先端を西から東にくるりと時計回りしたところ。宮津湾を渡るコースは追い風追い波、進めば進むほど海況が悪くなっていく蟻地獄。これは出られない。

臨機応変。それならと車で黒崎半島の東側にまわり、風裏から初日キャンプ予定地にアクセスするコースを考える。由良川の河口、神崎海岸に車を停めて海を見る。アウト。

西寄りの風を漕ぎ上がって湾を直接渡るには出し風が強すぎる。かといって、栗田湾を岸ベタで回り込んでいくと、向かい風で長い距離を漕ぐことになり、まるで修行のようだ。
もっと初日キャンプ地に近いところから出艇し、風裏のみを漕いでキャンプ地にあがることにする。臨機応変。

黒崎半島の北より、おっぱまに車で移動すると風裏の海はとても静か。花崗岩の砕けた白い砂地に明るい緑の海がキラキラしてる。ここから出艇し、陸路のない無人浜にカヤックでアクセスしてキャンプを張ることに決定。また、明日もまだまだ風が強いことを考え、今後キャンプ地は動かさず、海況を見ながら安全な範囲で漕ぎまわり、最終日はまたおっぱまに戻ることにする。臨機応変。

浜の近くで駐車できるところを探して農作業中のおばあちゃん達に声をかける。車から降りた大先輩とおばあちゃんとの話は中々終わらない。僕らは車の中から面白そうにそれを見ている。話の中で僕らが3日ほど車を停めてカヤックで回ることを話し、おばあちゃんのお孫さんたちが神奈川に出てきていることなどを聞いて握手をして別れた。

おっぱま
車をとめられる場所を聞いたら、おっぱまに一切合切をおろし、荷物をカヤックに積んでいく。地元の「スーパーにしがき」で食料も全泊分買い込んだ。おっぱまの砂は白いけど粗く、半透明の石英っぽい粒が混じる。ドライバッグを叩けばかんたんに落ちる。

雨が過ぎた後の曇り空の下ようやく漕ぎ出す。少し沖に出るともう風が強い。気をつけて岸ベタで漕いで行く。


ちいさな鼻を幾つか回ったらもうキャンプ予定地。陸路はなく、こんな風が強い日に海に出るもの好きも少ない。でも、ゼロではない。それは後でわかる。


手早く荷解きをしてテントをはり、キャンプの準備がととのった。森の枝が浜ぎりぎりまで伸びているので西風も日差しも抑えられ、最高のキャンプ地だ。昼から食べて飲んで喋って夜には早く寝た。



5月4日:

起きて二日目。朝方、釣りの渡船が僕らに向ってマイクで話しかける声でテントから出る。

「お客さ~ん、その辺は親子の熊が出てねー、たけのこを食べに出て来るからもう少し戻ったおっぱまに移られるとええですよー。大きなヒグマですわー。そこの竹林にみえましたわー」

そういってプープーと船の警報音を長く何回か鳴らし、最後に「マイクのテスト中」と流してからまた沖に出ていった。ヒグマは本州にいないだろう。嘘をついてるとは思わないけど、ツキノワグマでしょうなあ。皆で相談し、高い安全管理意識をもってキャンプ地を動かさないことに決める。臨機応変。

宮津には強風波浪注意報が全日出ていて、海上南西15m/sの風の予報。昨日と同じで、午前中はまだ少しましなくらい。怖いもの見たさということで、黒崎半島を風裏の東側から西側に回り込んで宮津湾に入り、伊根や天の橋立を遠くに見に行く。みんなで浮かんで漕ぎ始めた時、海保のヘリが低くおっぱまの方からやってきて、低く二回ほど回って舞鶴の方に飛んでいった。はい、よくよく気をつけて漕ぎます。


黒崎を回って宮津湾に入る。伊根が近く見える。天の橋立はまだ遠い。風浪は強まり、宮津湾を真っ直ぐ吹き抜けていく。渡る気も無いけど、昨日も今日もこれを渡るなんて判断は当然でてこないなあ。



ここまで日差しはあって気持ち良い。でも、この日は上空に強い寒気が入り、不安定な天気になるという予報だった。日本海の水はまだまだ冷たく、その上を吹く風が北よりに変わるとすうっと寒くなる。午前のうちにキャンプ地に戻ってのんびりしていると、ときおり北風に変わり灰色の雨雲が近づいてパラっと雨を降らせてまた日差しが戻る。この浜は北東から風が吹くとしんどそうだ。

また喋って飲んで楽しく寝た。


5月5日:

起きて三日目。この日は渡船は来なかった。9時以降は強風波浪注意報もなくなり、少しは距離を漕げそうな雰囲気。伊根の船屋まで宮津湾を渡って往復しようか、天の橋立を見に行こうか、少し範囲が広がる。黒崎半島の西側はもう見たので、東側をもう少し攻めよう。ついでに栗田のスーパーにしがきで買い出しをしよう。食べ物はまだあるけど、飲み物が心細い。ただの水はもちろんたっぷりある。往復20km弱。


明るい砂浜から出艇し、岸ベタの岩を楽しみながら栗田湾に入り、海洋高校のすぐそばに舟をあげる。栗田までは南西の向かい風。ここまでにも良さそうな浜が一杯あるけど、栗田の海岸は素晴らしかった。キャンプはできないけど、砂浜の際まである家並みが美しい。そこで投げ釣りをして遊ぶ地元の子供が良く馴染む。浜に流れ込む小さな生活用水も草むらに沿われて海に戻る。



浜からスーパーまで歩く。浜に吹く風は家並みに混じると途端に止み、夏の日差しがコンクリの照り返しでジリジリする。薄寒く感じた体があたたまる。帰り道も、スーパーのクーラーで冷えた体がまた暖まる。浜で昼ごはんを食べながら昼寝休憩をしてまたカヤックで浮かぶ。帰り道、北東に風が変わりまた向かい風の中帰る。

帰り道、ちょっと釣り道具を借りて引いてみる。借りる時「晩御飯お願いします」、ボウズで返す時「えー、今晩おかずなしかー」と言われる。ファイティングスピリットが少し出てきて、次は釣ったると思う。なるほど、釣り部の人たちはこういう感じなのか。

キャンプ地に2時過ぎに着く。最後の鼻を回り込んで浜が見えると自分のおうち感がすごい。地元の友達と無為に過ごす夏休みのよう。大層な目的地はなく、近所のコンビニに普通に弁当を買いにいき、ダベりながらうちに帰ってきて部屋でまた一緒にダベる。ダベる中身は、クラブのこと、カヤック技術のこと、普段の仕事のこと、自分の興味のあること、中身はなんでもいい。

キャンプ泊は今日で最後。明日は片付けて帰る日。また明るいうちから始め、この日は少し遅くまで喋って飲んで寝た。


5月6日:

起きて四日目。キャンプ地を畳んで車のあるおっぱままで帰る。すぐにつく。大先輩の車の脇にカヤックを置いて荷解きしようとすると、初日に会ったおばあちゃんが通りがかった。顔見知りにあった嬉しさで、また話が始まる。

「あんたら横浜の車のひとやろ?毎日まだ車があるないうて、話をしとったわ。3日ほどおるゆうたからなぁ。何日かまえには栗田の浜から折りたたみのボート出てね、ボートだけ見つかって二人戻らんいうて、いろいろさがしとったわ」

4日にみた海保のヘリはそれか。京都新聞のネット記事を帰ってから見たら、3日に栗田を出たのが4日の早朝に転覆した舟だけ見つかったらしい。乗ってた二人を探してヘリが飛び、すぐ近くの湾でのんきにしている僕らを見たことになる。3日といえば、栗田湾を渡るかどうか、由良川から海をみて諦めた日だ。出し風だった。

おばあちゃんの話は旦那さんの話になり、 毎日車を見て噂してた話に戻り、とめどない。

「僕らはその鼻の向こう側でキャンプしてました、ここは本当に良いところですね」
「そうですか、もうここにずっと住んでますわ。住所が変わったことがない」
「えー、地元も地元ですね。おいくつなんですか?」
「いくつに見えます?」と言って笑う。大先輩が聞いた。

「そういえば、この辺って熊は出るんですか?」
「熊?おるよ。熊やないけどこの前はうり坊が畑の横の網に出てね、こう筋の入ったかわいいうり坊で。役所の人に処置して貰おうおもて渡したら、山の上に放してきたからもう大丈夫いうんですわ。そんなんじゃもうだめで、それからはほってますわ」

おばあちゃんは畑でとった玉ねぎを自転車のかごに入れている。その自転車は電動アシストで、でもバッテリーはもうついていない。

「電池入れてもすぐになくなってしまうし、買うととても高くてとってしまいましたわ」

別れの挨拶をすると、アシストしないモーターの自転車を元気に漕いで80を越えたおばあちゃんは集落に戻っていった。この3日の間、ずっとそこにある車を見て少しは心配させたかもしれない。片付けの日にまた会えて良かった。今日の昼前には「あの横浜の車の人たち、元気に戻りなさったわ」と周り中が知ってるだろう。

大先輩の車に一切合切積んで、舞鶴でお風呂と食事に寄り道して、また高速に乗って帰った。GW最終日の高速は順調で、二箇所ほどの事故渋滞以外はすんなりと、予定どおりにとあるJR駅について解散した。

すごい場所を漕いだわけでも無いけれど、もう一つホームができた良いツアーだった。またみんなと漕ぎにきたい。